Q.変動金利には思わぬリスクがあると聞いたのですが。

そろそろ家庭を持つことになりそうなので、これを機に住宅ローンを組むことを考えています。

金利のタイプについては、今のところ、変動金利で行こうと考えているのですが、変動金利には思わぬリスクがあるから注意した方がよい、との話を聞きました。

あまりくわしいことは分からなかったのですが、変動金利にしていると、返済終了時にまとまったお金の支払いを請求されるケースがあるということです。

これは一体、どういうことなのでしょうか?

A.変動金利の<1.25倍ルール>によるものですが、かならず、そうなるということではありません。

変動金利の住宅ローンを選択していたら、返済終了時にまとまったお金を請求されるケースがあったとのことですが、結論から申し上げますと、そういったことは起こり得ます。

しかし、変動金利の住宅ローンの場合に、かならず、そうなるというものではありません。

そういったケースが起こり得る理由や、なぜ、そうなるのか、避けるにはどうしたらよいのか、といったことについて、以下にご説明していきたいと思います。

まず、最初にお伝えしておきたいのは、住宅ローンの変動金利に関しては、<1.25倍ルール>というものがあるということです。
これは、月々の住宅ローンの返済額に関するものです。

変動金利の場合には、当然のことながら、金利の見直しが行なわれ、金利が上下します。
ですので、景気の動向などによっては、見直し後の金利がそれまでと比べてずっと高くなるということが起こり得ます。

利息の額は金利によって決まりますから、見直し後の金利が、それまでよりもずっと高くなってしまえば、見直し後の返済額も、それまでよりもずっと高くなってしまいます。

しかし、あまりに極端な返済額の上昇は、家計の圧迫を招き、経済的な破たんを引き起こしかねません。

そういった点を考慮して、変動金利の住宅ローンの場合には、<たとえ金利がいくら上がっても、毎回の返済額に関しては、5年間は、それまでの返済額の1.25倍が上限>と決められています。これが、いわゆる<1.25倍ルール>です。

これだけだと分かりにくいので、以下に例を出します。

たとえば、変動金利の住宅ローンを組んでいて、元々の返済額が、月12万円だったとします。
ところが、金利の見直しが行なわれた結果、金利通りに計算すると、毎月の返済額が17万円になることになりました。

しかし、この場合には<1.25倍ルール>が適用されますので、見直し後の5年間の月々の返済額に関しては、[それまでの返済額の1.25倍=12万円x1.25=15万円]となり、17万円ずつ返済する必要はありません。

このように、<1.25倍ルール>が適用されることによって、家計の急激な圧迫が防がれている、というわけです。

ここまでは、<1.25倍ルール>のメリットに関するものでしたが、次に、<1.25倍ルール>のデメリットについて、ご紹介させていただきます。

このデメリットによって、<変動金利にしていると、返済終了時にまとまったお金の支払いを請求されるケースがある>という事態も発生しますので、非常に重要なポイントと言えます。

先にご説明しました通り、たとえ金利が急激に上昇しても、<1.25倍ルール>によって、返済額が際限なく上昇するといった事態は防がれています。

先の例ですと、返済額がすぐに17万円になるはずが、5年間は15万円で留められており、返済額が2万円ほど、安くなっている計算になります。

しかし、これは、2万円をチャラにしてもらっている、ということではありません。
安くなっている2万円分に関しては、返済が先送りにされているだけなのです。

そのままの状態で返済終了時を迎えますと、返済が先送りにされた分の請求が、返済終了時に一括して来ることになります。

<変動金利にしていると、返済終了時にまとまったお金の支払いを請求されるケースがある>というのは、このことです。

変動金利で毎回金利が上がり続けた場合などには、かなりの高額になることが予想されますので、あらかじめ注意して対策をとっておかないと、非常に困った事態に陥ることも考えられます。

地道な対策としましては、繰り上げ返済によって、先送り分を少しずつでも返済していくといったことが挙げられます。また、完済予定が退職の時期と重なる場合には、先送り分の返済を見込んで、退職金の一部を留保しておくことも必要になってきます。

変動金利の<1.25倍ルール>にはこのようなデメリットがありますので、金利の上昇局面が長期にわたって続くようであれば、早めに固定金利に切り替えてしまった方がよいケースもあります。

ただし、一般的に、金利の上昇は、まず固定金利が上がり、次に変動金利が上がるという形が多いです。ご自分が変動金利だからと、変動金利の動向だけをチェックしていたのでは、知らぬ間に固定金利の方が上がっていて、切り替えが手遅れになる可能性もあります。

固定金利への切り替えを考えておられる方は、変動金利だけでなく、固定金利の動向もチェックしておきましょう。

この<1.25倍ルール>に関しては、変動金利で住宅ローンを組む際に、かならず注意しておかなくてはいけない重要ポイントです。

ですので、実際に住宅ローンを組む際に、銀行等から説明があるはずなのですが、長い年月の間に失念してしまうということもありえます。

また<1.25倍ルール>のデメリットが出るのは金利の上昇局面なのですが、金利はこれまでずっと下降局面でしたので、その間に意識しないようになってしまっている可能性もあります。

何の準備もない状態で一括請求が来ますと大変なことになりますので、<1.25倍ルール>のデメリットをしっかり認識されて、適切な準備をしておかれることが、重要になってきます。