Q.住宅ローンを組む際に、地震保険は必要でしょうか?

近々、住宅ローンを組もうと思っているのですが、地震保険のことで悩んでいます。

直近に地震が起こるとは考えていないのですが、30年程度での完済を考えていますので、その間に地震に見舞われるかもしれないと思い、加入を検討中です。

ただ、地震保険の保障はそれほど手厚いものではないという話もあり、どうするか決めかねている状況です。

住宅ローンを組む際には、やはり地震保険にも入っておいた方がいいのでしょうか?

A.まずは、地震に関する保障の全体像を把握しましょう。

住宅ローンを組む際には地震保険にも入っておいた方がよいのかというご質問ですが、まずは地震に見舞われた際の保障に関する全体像を把握されることが重要かと思います。

地震で被災された際の保障としましては、地震保険の他に、公的な支援制度もあります。
それらについてきちんと把握されたのちに、総合的な見地から判断を下されることが重要となってきます。

以下に、地震災害に関する公的支援制度と地震保険の保障内容やその意図について、ご説明していきたいと思いますので、ぜひ、ご参考になさってください。

まずは、地震災害に関する公的支援制度についてです。

これは、被災者生活再建支援制度というもので、その名の通り、被災された方々が生活を再建される際の支援を目的とした制度です。

対象となるかどうかは、住宅の被害状況や生活再建の困難さによって決まります。
支援内容としては、基礎支援金と加算支援金の2つがあります。

このうち、基礎支援金とは、住宅の被害状況に応じて支払われるもので、最高100万円となっています。

ただし、世帯構成人数が1人の場合には、本来の額の75%が支払われます。

次に、加算支援金ですが、これは住宅の再建方法に応じて支払われるもので、最高200万円となっています。

地震で被災され、支援の対象となった場合には、上記の支援が得られますので、地震への備えをお考えになる場合には、上記の支援内容を含めてご検討されるのがよいかと思います。

続いて、地震保険について、ご説明します。

ご質問内容にもありましたが、地震保険は火災保険とちがい、その保障内容は、それほど手厚いものではありません。

そもそも地震保険は単独では契約ができず、かならず火災保険に付帯する方式での契約となっています。

ですので、もし火災保険に入っておられない場合には、地震保険に入るためには、火災保険にも入る必要があります。

そして、地震保険の保障内容は、それが付帯している火災保険の保障内容と密接に関わっています。

地震保険の保険金の額には縛りがあり、<それが付帯している火災保険の保険金の額の30%~50%>となっています(ただし、これとは別に、額としての上限があり、建物に関しては5000万円まで、家財に関しては1000万円までとなっています)。

これは実は、重大な影響をもたらします。

火災保険でしたら、3000万円の住居に3000万円の保険を掛ければ、十分に同じレベルでの生活再建が可能です。

しかし、地震保険の場合には、3000万円の住居の場合、最高でも半分の1500万円までしか保険金が設定できません。

ですので、地震保険に入っていても、それ単独では、同じレベルでの生活再建は無理だ、ということになります。
(ちなみに、地震保険という名前ではありますが、地震による損害以外にも、噴火やこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没、それに流失による損害も補償対象となっています)。

なぜ、保険金の額がこのような設定になっているのかということについてですが、ひとつには、<地震による損害は、火災などとちがい、同時に広範囲にわたって生じるために、保険金の支払いを必要とされる方が、一度に大量に発生する>という点が挙げられます。

ですので、実は、地震保険の保障内容というのは、<民間保険会社単独ではなく、政府によって再保険されることで成り立っている>のです。

以上のような事情があるため、地震保険の意図としましては、<被災する以前と全く同レベルの生活を再建するため>ではなく、<被災した状況からの生活再建のための足掛かりとするため>となっています。

なお、念のために書き添えておきますが、火災保険では、<地震が原因で起こった火災による損害や、地震によって延焼・拡大した損害>に関しては、補償されません。

火災保険と地震保険で保険金をダブルにもらえる、というわけにはまいりませんので、ご注意ください。

ここで、これまでのポイントを整理してみましょう。

・地震災害に関しては公的支援制度があり、被害状況などによって、合計で最高300万円。

・地震保険は、それのみでの契約はできない。火災保険に付帯する必要がある。

・地震保険の保険金の額は、それが付帯している火災保険の保険金の額の30%~50%(ただし、最高で建物が5000万円、家財が1000万円まで)。

・公的支援制度、地震保険共に、目的は、生活再建のための足掛かり。

こうしたことを考え合わせてみますと、たとえ地震保険に入っていたとしても、万一の場合に、それまでと同レベルの生活の再建を行なうのは不可能であることがお分かりいただけるかと思います。

ですので、生活再建のための足掛かりを目的とする保障に対して、どれだけ保険料を掛けられるのか、という話になってきます。

もちろん、足掛かりがあるに越したことはないのですが、足掛かりを確保するために日々の生活費が圧迫され、何かの時の備えがなくなってしまう、というのも困ります。

これに関しましては、それぞれのご家庭で、<何を、どの程度、重視されるのか>ということが大きく関係してきますので、軽々に必要または不必要ということは、申し上げかねます。

ですので、各ご家庭の状況や、生活設計に関する方針・優先順位をお考え合わせの上、ご家族ともご相談の上で、総合的な判断を下していただければと思います。

最後に付け加えておきますが、火災保険に入っている場合、地震保険は途中から付帯することもできます。

ですので、気持ちが固まらないうちは入らないままでおき、その気になった時点で加入する、というやり方も可能です。

お気持ちがなかなか固まらないのであれば、このやり方をとられるのも一案かと思います。