Q.今の家賃程度の負担で住宅ローンが組めそうなのですが…。

ずっと賃貸暮らしだったのですが、最近、一戸建ての購入に気持ちが動きつつあります。

と言いますのも、このたび、家賃の見直しが行われまして……簡単に言いますと、かなりの値上がりになりました。

そこで、ちょっと不動産屋さんに相談してみたところ、新しい家賃と同程度の支払いで、十分、住宅ローンが組めるとのことなのです。

これはいい機会なので、やってみようかと思っているのですが、実家の親から反対されています。

もう少し慎重に考えた方がいいとのことなのですが、家賃程度のお金で返していけるのであれば、特に問題はないように思うのですが……。

実際、何か特に問題はあるのでしょうか?

A.住宅を持った場合、出費が増えるため、家賃程度の負担では済まなくなります。

賃貸の家賃程度の負担で住宅ローンが組めるので前向きに検討されているとのことですが、ご質問の内容から見る限り、あまり積極的にお考えにならない方がよいかと思います。

「住宅ローンは家賃を払うのと同じ」といった勧め方はよくあるのですが、実際にはそうではありません。

どのようにちがうのかについては、以下に順を追ってご説明いたします。

まずは、賃貸の場合と持ち家とでは、出費がどうちがってくるのか、ということについてです。

住宅ローンを組むということは、家を持つということですが、家を持つことによって、賃貸の際には必要のなかったさまざまな出費が生じてくるのです。

この出費は、大きく分けますと、税金と維持費の2種類に分けられます。

税金には、<家を持った最初だけ払わなければならないもの>と、<家を持っている限り、ずっと払い続けなくてはならないもの>の2種類があります。

家を持った最初だけ支払わなければならないものとしては、不動産取得税や登録免許税等があります。

こちらの出費も痛いのですが、一度きりですので、あとあとまで響くといったものではありません。

問題は、家を持っている限りずっと払う必要がある税金で、こちらに関しては、前もって意識しておかれる必要があります。

家を持っている限り、ずっと払う必要のある税金としては、固定資産税と都市計画税の2つが挙げられます。
この2つは毎年払う必要がありますので、賃貸の時に比べますと、毎年の負担がそれだけ増えるということになります。

次に維持費についてですが、こちらに関しては、<日々の生活において必要となってくるもの>と、<家屋や設備の傷みを補修する際に必要となるもの>の2つがあります。

まず、日々の生活に関するものについてですが、分かりやすい例としましては、光熱費が挙げられます。
一般に、家を持った場合、賃貸の時よりも部屋数が増えたり、各部屋の大きさが大きくなったりしますから、その分、自然と光熱費の額も増加することになります。

また、郊外に家を持った場合、通勤に要するお金も、以前より増加することを覚悟しておかなくてはなりません。

こういった日常に関するお金については、あらかじめきちんと意識しておかないと、知らないうちに生活を圧迫して、気がついた時にはかなり苦しいことになってしまっている可能性があります。

こういったお金まで考慮に入れますと、<家賃程度の返済額で済むのなら>というお考えでは苦しくなってしまいがちだということが、お分かりいただけるかと思います。

ですから、<家賃からこういったお金を引いた程度の返済額で、住宅ローンをやっていけるのか>、といった視点でご検討いただければと思います。

次に、家屋や設備の傷みに関する補修費についてですが、家というものは購入して終わりではなく、その後も定期的にメンテナンスを続けていく必要があります。

では、そのお金を誰が払うのかといえば、持ち家ですので、ご自分でお金を準備して支払われる必要があります。また、電気温水器などが寿命を迎えた場合にも、自腹で買い替えを行なわなくてはなりません。

こういった補修関連の出費に関しましては、どの程度手を入れるかによっても変わってくるのですが、<10年で、最低でも100万円程度はかかる>といわれています。

つまり、30年ローンでしたら、ローンの完済までに、補修費として少なくとも300万円は余分に見ておく必要がある、ということです。

住宅ローンを組まれた場合、上記のようにさまざまな出費が必要となってきますので、家賃と同じような感覚で考えていらっしゃると、厳しいことになる可能性があります。

特に、住宅ローン返済にボーナス払いを含んでいる場合ですと、何かの時のためのお金を貯める手段がほとんどなくなってしまいますので、ちょっとしたトラブルによって、家を手放さなくてはならないといったこともありえます。

もちろん、しっかり予定を立てて、見通しを立てられた上であれば、この限りではありませんので、<家賃程度>と簡単にお考えになるのではなく、必要なお金の種類と額を明確に把握された上で、無理なく返済していける額の住宅ローンを組まれることをおすすめしておきます。